銀緑館~街の記憶~
こんにちは。ジジです。
今、銀座6丁目で大規模な再開発が行われようとしているのを皆さんはご存知でしょうか。
この再開発に伴い、多くの建物が閉館となります。
銀緑館(現在名:第一銀緑ビル)もその一つです。
関東大震災の復興期に建てられ、銀座で80年以上の歴史を持つ銀緑館は、
6月末で閉館し、その後、取り壊されることが決まっています。

ジジが銀緑館の存在を知ったのは、わりあい最近のことです。
初めて訪れたのは、昨年9月頃、昨秋の見学会の下見でした。
当時、地下で営業していた「バーTARU」で、銀緑館が取り壊しになることを知りました。

「取り壊される前にきちんと銀緑館とお別れがしたい!」
そうした思いから、つてを頼りに、銀緑館の管理会社に連絡をとり、内観見学させていただけることになりました。
銀緑館の企画を考えるに当たって、一番頭を悩ましたことは、銀緑館についてお話をしていただける、建物とゆかりのある方を探すことでした。
オープンアーキの活動で何よりも大切にしていることは、建物にゆかりのある方々から直接お話を伺うこと。
建物に対する理解がより深まり、建物をめぐる色々な思いを共有できるので、ここは絶対に妥協できないところなのです。
その時、既に店子は5階のテーラー「銀座スコット」だけになっていました。

「銀座スコット」は、オーダメイドの高級紳士服専門のテーラーです。「一度袖を通したら、他のスーツは着れない」と数々の財界人を唸らせた知る人ぞ知る名店です。

高齢のご夫婦が営んでいるお店で、職人気質のご主人が一針一針手縫いしているため、大変忙しくされているとのこと、お願いするのは難しいと聞いてはいましたが、銀緑館の管理人さんに無理を言って、ご協力を打診してもらいました。
しかし、色よい返事はもらえませんでした。
これまでご贔屓にされてきたお客様から、最後の注文がたくさん入り、ご主人は食事を摂るのも忘れて最後の仕事に向き合っているとのことでした。
気を取り直して、かつて1階の店子であった美術品販売店「思文閣」に連絡をとりました。
「入居していた当時を知る人はみな、昨年退職されました」と申し訳なさそうにお返事がきてしまいました。

ところが、見学会を一週間後に控えた土曜日に事態は急展開します。
見学会の打ち合わせと外観のビデオ撮影のために、銀緑館の入り口にいたところ、「銀座スコット」の奥様がちょうど通りがかりました。

奥様から「何か御用ですか?」と声をかけられたので、思い切って、翌週に見学会を実施することなどを説明しました。すると、奥様から「これも何かのご縁だから」と、とんとん拍子で仕事場にお邪魔させていただくことに。
色々とお話しをするうちに、見学会の当日に、奥様からお話をいただけることになったのです。
こうして、
6月7日「銀座・三十間堀の建物を観て歩く~銀緑館、最後の見学会」を迎えました。
イベントは、銀緑館の見学に加え、かつて中央通りと昭和通りの間を流れていた「三十間堀川」に沿って再開発の波に押される銀座の変遷に触れながら、建築めぐりを愉しみました。
当日は、銀座1丁目からスタートし、まずは、銀緑館と同様に震災復興期に建てられ、かつて高級アパートメントだった奥野ビルを見学。

奥野ビル306号室プロジェクトのメンバーの方に協力をいただき、かつて美容室だった306号室で、その歴史等について貴重なお話を伺いました。

続いて、三十間堀の運河の上、三原橋地下街へ。ここも、再開発で取り壊しが決まっています。

そしていよいよ銀緑館へ。
多くのギャラリーが入っていたことから、ピクチャーレールが残る空間、美しい曲線を描く階段室や玄関のモザイクタイル、電気が止まっている地下に至るまでじっくりと見学しました。








そして、銀座スコットの奥様が、銀座の移り変わり、銀緑館の思い出、仕事への思いなどを参加者の皆さんの前で語ってくださったのです。

長年、銀緑館を仕事場に起こったエピソードの数々。言葉の一つ一つにご自分の仕事に誇りを持ち、お客様に対して正直に誠意を持って向き合ってきた想いが心にずしーんと響き、彼らの想いが伝わってきました。
参加者の方々も、熱心に耳を傾けていました。

奥様にお話いただくことが出来て本当によかったと、ジジは胸が熱くなりました。
多くの方々に愛され、銀座で40年以上も商売を続けてきたテーラー「銀座スコット」の歴史も、銀緑館とともに幕を閉じます。

見学会の最後に、
1953年創業以来、銀緑館の地下で営業してきた「バーTARU」の新店舗にお邪魔しました。当時の内装の一部が随所にちりばめられていました。

銀緑館時代の写真を眺めながら、余韻にひたる時間を過ごしました。
また、参加者の方々とゆっくりお話をする機会ともなり、
スタッフにとって大変有意義な時間となりました。

今回の見学会を通じて、
参加者をはじめ、一人でも多くの人の心の中に銀緑館や「銀座スコット」の記憶が刻まれたのなら、仕事の合間を縫い、最後の見学会を実現した者としてとてもうれしく思います。
〔ジジ〕
追記
7月のある日、銀座に行く用事があったので、銀緑館の前を通ってみました。
変わらずひっそりとたたずんでいて、ちょっとホッとしました。
そう遠くない将来、ポッカリと空いた空間を見上げる日が来るのでしょうか。
今、銀座6丁目で大規模な再開発が行われようとしているのを皆さんはご存知でしょうか。
この再開発に伴い、多くの建物が閉館となります。
銀緑館(現在名:第一銀緑ビル)もその一つです。
関東大震災の復興期に建てられ、銀座で80年以上の歴史を持つ銀緑館は、
6月末で閉館し、その後、取り壊されることが決まっています。

ジジが銀緑館の存在を知ったのは、わりあい最近のことです。
初めて訪れたのは、昨年9月頃、昨秋の見学会の下見でした。
当時、地下で営業していた「バーTARU」で、銀緑館が取り壊しになることを知りました。

「取り壊される前にきちんと銀緑館とお別れがしたい!」
そうした思いから、つてを頼りに、銀緑館の管理会社に連絡をとり、内観見学させていただけることになりました。
銀緑館の企画を考えるに当たって、一番頭を悩ましたことは、銀緑館についてお話をしていただける、建物とゆかりのある方を探すことでした。
オープンアーキの活動で何よりも大切にしていることは、建物にゆかりのある方々から直接お話を伺うこと。
建物に対する理解がより深まり、建物をめぐる色々な思いを共有できるので、ここは絶対に妥協できないところなのです。
その時、既に店子は5階のテーラー「銀座スコット」だけになっていました。

「銀座スコット」は、オーダメイドの高級紳士服専門のテーラーです。「一度袖を通したら、他のスーツは着れない」と数々の財界人を唸らせた知る人ぞ知る名店です。

高齢のご夫婦が営んでいるお店で、職人気質のご主人が一針一針手縫いしているため、大変忙しくされているとのこと、お願いするのは難しいと聞いてはいましたが、銀緑館の管理人さんに無理を言って、ご協力を打診してもらいました。
しかし、色よい返事はもらえませんでした。
これまでご贔屓にされてきたお客様から、最後の注文がたくさん入り、ご主人は食事を摂るのも忘れて最後の仕事に向き合っているとのことでした。
気を取り直して、かつて1階の店子であった美術品販売店「思文閣」に連絡をとりました。
「入居していた当時を知る人はみな、昨年退職されました」と申し訳なさそうにお返事がきてしまいました。

ところが、見学会を一週間後に控えた土曜日に事態は急展開します。
見学会の打ち合わせと外観のビデオ撮影のために、銀緑館の入り口にいたところ、「銀座スコット」の奥様がちょうど通りがかりました。

奥様から「何か御用ですか?」と声をかけられたので、思い切って、翌週に見学会を実施することなどを説明しました。すると、奥様から「これも何かのご縁だから」と、とんとん拍子で仕事場にお邪魔させていただくことに。
色々とお話しをするうちに、見学会の当日に、奥様からお話をいただけることになったのです。
こうして、
6月7日「銀座・三十間堀の建物を観て歩く~銀緑館、最後の見学会」を迎えました。
イベントは、銀緑館の見学に加え、かつて中央通りと昭和通りの間を流れていた「三十間堀川」に沿って再開発の波に押される銀座の変遷に触れながら、建築めぐりを愉しみました。
当日は、銀座1丁目からスタートし、まずは、銀緑館と同様に震災復興期に建てられ、かつて高級アパートメントだった奥野ビルを見学。

奥野ビル306号室プロジェクトのメンバーの方に協力をいただき、かつて美容室だった306号室で、その歴史等について貴重なお話を伺いました。

続いて、三十間堀の運河の上、三原橋地下街へ。ここも、再開発で取り壊しが決まっています。

そしていよいよ銀緑館へ。
多くのギャラリーが入っていたことから、ピクチャーレールが残る空間、美しい曲線を描く階段室や玄関のモザイクタイル、電気が止まっている地下に至るまでじっくりと見学しました。








そして、銀座スコットの奥様が、銀座の移り変わり、銀緑館の思い出、仕事への思いなどを参加者の皆さんの前で語ってくださったのです。

長年、銀緑館を仕事場に起こったエピソードの数々。言葉の一つ一つにご自分の仕事に誇りを持ち、お客様に対して正直に誠意を持って向き合ってきた想いが心にずしーんと響き、彼らの想いが伝わってきました。
参加者の方々も、熱心に耳を傾けていました。

奥様にお話いただくことが出来て本当によかったと、ジジは胸が熱くなりました。
多くの方々に愛され、銀座で40年以上も商売を続けてきたテーラー「銀座スコット」の歴史も、銀緑館とともに幕を閉じます。

見学会の最後に、
1953年創業以来、銀緑館の地下で営業してきた「バーTARU」の新店舗にお邪魔しました。当時の内装の一部が随所にちりばめられていました。

銀緑館時代の写真を眺めながら、余韻にひたる時間を過ごしました。
また、参加者の方々とゆっくりお話をする機会ともなり、
スタッフにとって大変有意義な時間となりました。

今回の見学会を通じて、
参加者をはじめ、一人でも多くの人の心の中に銀緑館や「銀座スコット」の記憶が刻まれたのなら、仕事の合間を縫い、最後の見学会を実現した者としてとてもうれしく思います。
〔ジジ〕
追記
7月のある日、銀座に行く用事があったので、銀緑館の前を通ってみました。
変わらずひっそりとたたずんでいて、ちょっとホッとしました。
そう遠くない将来、ポッカリと空いた空間を見上げる日が来るのでしょうか。